持続可能な人口の原理とシンギュラリティ問題の関係(2020716()B)
 「持続可能な人口の原理」(Hara,T.,2020.An Essay on the Principle of Sustainable Population)に書いたように、指数関数増加は時間の経過ともに爆発的成長を遂げるが、そのカーブはフラクタルなのでどの時点をとっても同じ形となり、レイ・カーツワイル博士が提唱するようなシンギュラリティ(技術的特異点)は、いつどの時代にも必ず存在する。また、X軸(時間)とY軸(量)のとり方を工夫して作図すれば、ジョエル・C・コーエンが世界人口の成長で示した逆L字型の垂直離陸型の壁のような絶滅曲線となる。
 また、指数関数増加による無限増加は論理的には可能であっても現実的には不可能なので、必ず成長の限界(事後的に確定する天井)に接近する。このため、そのカーブは指数関数ではなく、ロジスティック曲線に収束する。集積回路のメモリーの増加も世界人口も同じである。
 しかも、r>0の指数関数増加を長時間持続することはできないので、ロジスティック曲線に収束するまでの時間は宇宙時間的には一瞬でさえないといえる(r=1%でも数百年は持たない)。従って個々のロジスティック曲線の寿命は短いが、存続する場合には次の成長の波が起こり、多段階の成長となり、それらがまた新しい時間スケールと天井の高さから統合された1つの成長曲線となる。つまり、成長曲線もフラクタルなので、どの時点を取っても持続している成長曲線は同じS字型を示す。従って、レベルオフの状態がそのまま続く訳ではなく、連続成長するか、急減して消滅するかのいずれかとなる。
 そういう事情なので、現時点で指数関数増加を示しているからといって、無限に増加して別次元に入るとか、直ちに絶滅してまうとか、予言する根拠にはなりえない。
 むしろ、我々が観察している現象は我々自身の生命も含め、すべて無数の波動から成り立っていると考えた方が良いのだと思う。

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